■文章編7      ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓      ┃ ┃      ┃ インタフェース(MMI編) ┃      ┃ ┃      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ■MMI さて,前項で述べたような物質的なインタフェース以外でも,コンピュータ システムを使う人間が,実際にハード,ソフトを操作する部分や環境のことを, ユーザー・インタフェース,あるいはマン・マシン・インタフェース(MMI) と呼びます。ちなみに,以前はヒューマン・インタフェース(HI)という表 現も使われていましたが,最近あまりお目にかかりません。 コンピュータでは普通,システムプログラムに対して人間がなんらかの意思 (命令やデータ)を伝え,コンピュータがそれに回答を返す,といった手順を 繰り返して操作が進んでいきます(ゲームでもワープロでもプログラミングで もだいたい同様ですね)。 その際,たとえば, ・キーボードのタッチはどうか ・どのようなキー配列になっているのか ・マウスやトラックボールは使えるのか ・ジョイパッドやジョイスティックの使い勝手はどうか ・ディスプレイの大きさ,表示可能な色数,表示の具合はどうか などのハード寄りの局面から, ・ディスプレイにユーザーからの命令をどのように表示するのか(コマンド方 式やメニュー方式など) ・ファイル選択はどのように行うのか ・エラーメッセージはどう返すのか といったソフトの仕様にいたるまで,マン・マシン・インタフェースのテーマ は実に多岐にわたり,コンピュータシステム構築時の巨大な課題の1つとなっ ています。 たとえば身近な例として,最近の銀行のCD(Cash Dispenser,現金自動 支払機)を見てみましょう。そこでは預金者がスムーズに操作を始められるよ う,たとえばタッチパネルで〔払い戻し〕〔振り込み〕等を選ばせたり,「カ ードを入れてください」ほかの音声データで手順を指示してくれたり,処理が 終了するまでの待ち時間をディスプレイの矢印の点滅で知らせてくれたり,と いった工夫がなされています。それらは,欲をいえばきりがないとはいえ,子 供からお年寄りまでが使うであろうサービス機の操作に関する,さまざまな努 力の結果といっていいかと思います。 ■GUI,ぐい さて。パソコンにおけるマン・マシン・インタフェースを語る上で避けて通 れないのが,人間が与える命令や,パソコンが返す返事を,ディスプレイ上で どのように表示,表現するか,という大々問題です。 MS-DOSやTownsOS V2.1のコマンドモードなどでは,キーボードか ら入力された文字列が黒地の画面に無愛想に表示され,パソコンからの返事も また,原則的にはそのコマンドラインに文字として返ってきます。 このような,文字のやりとりを基本とした人間と機械とのコミュニケーシ ョンのあり方を,CUI(Character User Interface)といいます。実は, CUIというのは,昔からあった言葉ではありません。次に説明するGUIが 話題になってから,相対的に登場した言葉なんですね。 そして。最近とみにコンピュータ雑誌をにぎわせている言葉の1つが,問題 のGUI(Graphical User Interface)ですね。これは,読んで字の如し, 従来の文字に代えてグラフィックをマン・マシン・インタフェースの基本にす えよう,というものです。 つまり,たとえばキーボードから A>format b: /s と文字列を打ち込んでディスクフォーマットコマンドを実行するのがCUIな ら,それに対し,画面に表示された四角いアイコン(ままフロッピィディスク の形をしていたりする)をマウスでダブルクリックしてディスクフォーマット プログラムを起動するのがGUI,といった感じでしょうか。 しかも,GUIの場合,プログラムの起動だけでなく,その先,つまりこの 場合ならどのドライブのフロッピィディスクをフォーマットするか,フォーマ ットするディスクは2HDか2DDか,システムは転送するかしないかなどな ど・・・・についても,画面上のアイコンや記号をクリックして選ぶことになりま すし,エラーメッセージも,四角い窓が開いてビジュアルに表示してくれたり します。 ■ウィンドウシステム さあ,お待ちかね(?),「窓」という言葉が出てきました。 ディスプレイに窓のように四角い枠を開き,その窓ごとにいろいろな情報を 表示するシステムを,ウィンドウシステムといいます。今をときめくMS-Wi ndowsもその一種ですね。一種というくらいですから,それ以前にもウィンド ウシステムはありました。パソコン上で最も有名なのはアップル社のMacinto shのそれでしょう。 Macで実現されているウィンドウシステムは,後で述べるマルチウィンドウ を実現しているだけでなく,プルダウンメニュー,アイコンによるプログラム やデータの管理,マウスによる操作性の統一といった,GUIで必要なこと, 問題になりそうなことをことごとく綿密に練り上げたうえで登場したため,仕 様的な完成度も高く,MS-Windowsをはじめ後々のウィンドウシステムに大 きな影響を与えました(FM TOWNSのTownsMENUなどがGUIとし てまだレベルが低いといわれるのは,この,アプリケーションとの操作性の統 一がまだまだ弱いことによります。もっとも,それでも初心者にMS-DOS のインストール作業から強制するCUIシステムよりはよっぽどマシではない か,という説もありますが)。 ウィンドウシステムの中には,ウィンドウの大きさや場所が固定で,しかも ウィンドウどうしを重ね合わせることができない不便きわまりない原始的なも のから,開く場所・大きさ・数・重ね合わせなどを画面のドット単位で自由自 在に設定できる高水準なものまで,いろいろあります。 この,複数のウィンドウを同時に開くことができるシステムを,とくにマル チウィンドウといいます。MacやMS-Windowsの画面をご存じの方には説明 するまでもないでしょうし,TOWNSユーザーの方も,SimEarthやHEwi nなどを思い起こしていただければ,おわかりいただけると思います。SimEa rthでは単にゲーム進行に関する情報を複数のウィンドウに分けて表示するだ けですが,HEwinともなると,ウィンドウどうしで情報を渡し合えるように なります。これは,ウィンドウシステムの目的の1つで,たとえば,1つのウ ィンドウで住所録ソフトが立ち上がっており,そのデータをもう一方のウィン ドウで立ち上がっている表計算ソフトに渡せるとしたなら,それはたいへん便 利なことでしょう。 そして,それをさらに上回るものとして,各ウィンドウで表示されている別 個のアプリケーションが,メモリやCPUタイムを自動的に調整し合って,同 時に動作してくれるなら,もっともっと便利でしょう。そのようなOSの機能 を「マルチタスク」といいます(タスクとは「仕事」といったような意味)。 しかし,これはOSのお仕事であって,ウィンドウシステムの責任ではありま せん,念のため。 マルチタスクが実現すると,たとえば時間のかかる計算を1つのタスクで行 いながら,ユーザーは別のタスクでゲームや通信をするなど,パソコンのより 便利な活用法が可能になります。ちなみに,MS-Windowsでは,いちおうマ ルチタスクとはいわれるものの,複数のプログラムが複数のウィンドウで同時 に立ち上がるまでで,「CPUタイムを自動的に調整し合う(TSS,タイム シェアリングシステムという)」ところまではやってくれません。基本的にプ ログラムが動くのはアクティブなウィンドウ1つに限定されており,ほかのウ ィンドウはプログラムを停止して待っているような感じです。 ウィンドウについては,取り上げねばならない話題が多すぎて,少し文章が 散漫になってしまいましたが,本誌の各号で,FM版のMS-Windowsについ ての詳しい紹介記事も掲載されています。機会がありましたら,ぜひそちらも ご参照ください。